「ありがとう」が聞こえるお店でありたい。

先日、お客様からこんなお話を伺いました。

「最近、買い物をしても『ありがとうございました』って言われることがほとんどなくなったの。」

セルフレジが増え、お会計は機械が案内してくれます。

スーパーやお店では、店員さんと一言も言葉を交わさずに買い物を終えることも。

便利になった一方で、人と人とのやり取りは少しずつ減ってきています。

そんな中、そのお客様は続けてこう話してくださいました。

「ichiに来ると、いつも『ありがとうございました』って言ってくれるでしょう。それが嬉しいの。」

私にとっては当たり前だと思っていた一言でした。

でも、その一言を嬉しいと感じてくださる方がいる。

そのお話を聞いたとき、改めて「人とのつながり」の大切さを考えさせられました。


実は、私が移動販売を始めようと思った原点には家族の経験があります。

以前、母は近所のお店へ毎日のように買い物へ出かけ

その日に作る献立を考えて買い物をし、家族の食事を作っていました。

ところが時代とともに近所の小売店がなくなり

買い物は車で大型店へ行くのが当たり前に。

免許を返納した後は、何度かバスや地下鉄を利用して買い物へ行っていましたが

「体力的につらい」と話すようになり、やがて私が仕事帰りに買い物を済ませるように。

すっかり買い物から遠ざかっていたある日

足りない調味料を近所のコンビニへ買い物へ行ったとき

以前は店員さんがレジにいて支払いをしていたのに

セルフレジに変わっていて、まごついている間に後ろにレジ待ちの列ができてしまい

「泣きたくなって帰ってきた。」と話されました。

それ以来、ほとんど買い物へでかけることはなくなり

外へ出る機会も、人と話すことも減っていきました。

判断力が衰え、食事を作ることもなくなり

ただ毎日をぼんやりと過ごすように。

「このまま認知症になってしまうんじゃないか」と

不安そうにつぶやいた母の言葉が今でも忘れられません。

当たり前のようにしていた買い物という日常。

「今日は何を食べよう。」

「どの野菜が美味しそうかな。」

「この野菜は初めて見るけどどうやって食べるの?」

お店の人と話し、偶然会った人とも立ち話をして

帰り際には「ありがとうございました!」と声をかけてもらう。

そんな何気ない時間こそが、人とのつながりであり

毎日を元気に過ごす力なのではないのかと思うのです。

 

ichiは野菜を売るためだけに移動販売を始めたわけではありません。

もちろん、美味しくて安心して食べられる野菜をお届けすることは大切です。

でも、それ以上に大切にしたいのは、人と人が顔を合わせ、言葉を交わし、笑顔になれる時間です。

「ここへ来ると誰かに会える。」

そんな場所になれたら嬉しいと、いつも思っています。

実際にお客様からは、

「買い物に来るのが毎週楽しみなの。」

「ichiさんが来なかったら、一日中家でテレビを見ているだけだった。」

そんな言葉をいただくことがあります。

その一つひとつの言葉が、私の励みになっています。

季節の美味しい野菜と一緒に、会話や笑顔、そして人とのつながりもお届けしたいと思っています。

ichiに足を運んでくださったことに「ありがとうございます。」とかける短い言葉。

たった10文字の言葉ですが、その一言で心が少し温かくなり、「また来よう」と思っていただけたなら

嬉しいです。

 

買い物が、外へ出るきっかけになり、誰かと話す楽しみになり、毎日を元気に過ごす力になる。

そんな地域の小さな居場所であり続けること。

それが、野菜移動販売ichiが目指していることです。